土地を購入したあとで「地盤改良工事が必要です」と告げられ、驚いた経験を持つ方は少なくありません。
地盤改良工事は本当に必要なのか、避けられる土地はあるのかは、多くの子育て世帯が気になるポイントです。
改良工事が必要になると、工法によっては100万円を超える追加費用がかかり、予算オーバーの原因にもなります。
結論からいうと、地盤改良工事が必要かどうかは、建築前に行う地盤調査の結果で決まります。
ただし、地形や過去の土地利用を事前に調べれば、改良が必要になりやすい土地かどうかはある程度予測できます。
この記事では、地盤改良工事が必要になる判断基準から、土地購入前にできるチェック方法、工法別の費用相場まで順に解説します。
この記事でわかること
- 地盤改良工事が必要かどうかの判断基準がわかる
- 改良が必要になりやすい土地・不要な土地がわかる
- 土地購入前に自分でできる地盤チェックがわかる
- 地盤調査報告書で見るべきポイントがわかる
- 工法別の費用相場と予算の組み方がわかる
地盤改良工事は必要?判断の決め手は「地盤調査」

地盤改良工事の要否は、見た目や感覚ではなく、法令にもとづく地盤調査の数値で判断されます。
まずは工事の役割と、調査が欠かせない理由を押さえておきましょう。
地盤改良工事とは|軟弱な地盤を補強して家を支える工事
地盤改良工事とは、軟弱な地盤を補強し、建物を安全に支えられる状態にする工事のことです。
具体的には、セメント系の固化材を土と混ぜて固めたり、鋼管の杭を固い地層まで打ち込んだりします。
主な目的は次の3つです。
- 建物が不均等に沈む「不同沈下」を防ぐ
- 建物の重さを、固い地盤や支持層へ確実に伝える
- 長期にわたって建物の安全性と資産価値を保つ
なお、一般的な住宅の地盤改良は沈下対策が主な目的であり、液状化を完全に防げるとは限らない点には注意が必要です。
地盤調査が事実上必須とされる理由
建築基準法施行令第93条では、地盤の許容応力度(地盤が安全に支えられる力)を、国が定める方法による地盤調査にもとづいて定めるよう求めています。
地盤の種類ごとの数値表を使う方法も認められていますが、戸建て住宅では敷地ごとに調査を行うのが一般的です。
さらに、新築住宅を引き渡す事業者は、構造耐力上主要な部分の瑕疵について10年間の担保責任を負います。
この責任を確実に果たすための住宅瑕疵担保責任保険でも、地盤調査を前提とした設計施工基準が設けられています。
そのため現在の戸建て住宅では、着工前に地盤調査を行い、必要に応じて改良工事をするのが標準的な流れです。
地盤改良が必要と判断される基準
戸建て住宅の地盤調査で最も多く使われているのが、SWS試験(スクリューウエイト貫入試験)です。
平成13年国土交通省告示第1113号では、SWS試験の結果について次のような条件を定めています。
| 深さの範囲 | 注意が必要な層 | 求められる対応 |
| 基礎の底から2m以内 | 荷重1kN(約100kg)以下で自沈する層 | 建物の重さによる沈下などが生じないことを確かめる |
| 基礎の底から2m超〜5m以内 | 荷重500N(約50kg)以下で自沈する層 | 同上 |
「自沈」とは、ロッドを回転させなくても、おもりの重さだけで沈んでしまう状態を指します。
この条件に当てはまると沈下の検討が必要になり、多くの場合は地盤改良や杭などの対策がとられます。
また、平成12年建設省告示第1347号では、地盤の長期許容応力度に応じて採用できる基礎の種類が決められています。
| 地盤の長期許容応力度 | 採用できる基礎 |
| 20kN/㎡未満 | 基礎杭を用いた構造(地盤改良で支持力を高める方法もある) |
| 20kN/㎡以上30kN/㎡未満 | 基礎杭を用いた構造、またはべた基礎 |
| 30kN/㎡以上 | 基礎杭を用いた構造、べた基礎、布基礎 |
つまり、調査で地盤の支持力が足りない、または自沈層が見つかった場合に、地盤改良工事が必要と判断されます。
地盤改良をしないとどうなる?不同沈下のリスク
必要な改良を行わずに家を建てると、建物が傾く不同沈下が起きるおそれがあります。
平成12年建設省告示第1653号では、床の傾きが1,000分の3以上で構造上の瑕疵の可能性が一定程度あり、1,000分の6以上では可能性が高いとされています。
1,000分の6は1mあたり6mmの高低差にあたり、ドアが勝手に動く、めまいを感じるといった影響が出ることもあります。
傾いた家の修正工事は、建てる前の地盤改良よりも大がかりになり、費用も高額になりがちです。
地盤改良費は「削れるコスト」ではなく、家族の安全と住まいの資産価値を守るための必要経費と考えましょう。
地盤改良工事が必要になりやすい土地の特徴

地盤改良が必要になりやすいのは、水分を多く含む柔らかい土や、人の手で埋め立てた土でできた土地です。
代表的なタイプと、事前に確認できる資料を表にまとめました。
| 土地のタイプ | 地盤が弱くなりやすい理由 | 事前に確認できる資料 |
| 元田んぼ・沼・池 | 水を含んだ柔らかい粘土などが堆積している | 登記事項証明書の地目、昔の地形図・空中写真 |
| 川・海の近くの低地 | 川が運んだ新しい土砂(沖積層)が厚く積もっている | 地理院地図の地形分類、重ねるハザードマップ |
| 埋立地 | 埋め土が締まりきっておらず、液状化も起きやすい | 地形区分に基づく液状化の発生傾向図 |
| 谷を埋めた造成地 | 盛土部分が沈下しやすく、切土との境で差が出る | 大規模盛土造成地マップ |
田んぼ・沼・池だった土地
水田は長年水を張って稲作をしてきたため、地中に水分を多く含んだ柔らかい土が残っていることがあります。
沼や池を埋め立てた土地も同様で、建物の重さを支える力が不足しやすい傾向です。
地名に「沼」「池」「田」「谷」「窪」などの文字が入っている場合は、かつて水辺や低地だった可能性を示すヒントになります。
ただし地名だけで判断はできないため、あくまで下調べのきっかけとして活用しましょう。
川や海の近くの低地・埋立地
河川や海岸付近の低地は、川が運んだ土砂が堆積してできた「沖積層」と呼ばれる新しい地層であることが多いです。
沖積層は締まりが弱く地下水位も高いため、地盤改良が必要になる確率が高い傾向にあります。
特に三角州や旧河道(昔の川の流れ跡)、海や沼を埋め立てた土地は、液状化のリスクにも注意が必要です。
国土交通省は、地形をもとに液状化の起きやすさを5段階で示した「地形区分に基づく液状化の発生傾向図」を公開しています。
谷を埋めた造成地・盛土と切土にまたがる土地
山や丘を削ったり谷を埋めたりして平らにした造成地は、盛土の部分が十分に締め固まっていないと沈下しやすくなります。
1つの敷地が切土と盛土にまたがっていると、場所によって地盤の強さが異なり、不同沈下の原因になります。
谷や斜面に大規模に盛土した造成地は、自治体が「大規模盛土造成地マップ」として公表しています。
マップに載っていても直ちに危険という意味ではありませんが、地盤調査の結果をより慎重に確認したい土地といえます。
大阪で土地を探すなら知っておきたい地形の傾向
大阪平野の中央には、南北に延びる上町台地があり、周囲の低地に比べて古く締まった地層が分布しています。
一方、東側の河内平野は、かつて「河内湖」と呼ばれた水域が陸地化した場所で、柔らかい粘土層が厚く堆積したエリアが広がります。
淀川や大和川の沿岸、大阪湾岸の埋立地も、地盤改良が必要になりやすい地域です。
北摂の千里丘陵や南部の泉北丘陵などは地盤が比較的安定していますが、ニュータウン開発で造成された宅地も多く含まれます。
大阪府は、政令市・中核市を除く府内市町村の「大規模盛土造成地マップ(大阪府)」を公開しているため、丘陵地の土地では合わせて確認しておくと安心です。
地盤改良工事が不要になりやすい土地の特徴

反対に、地盤改良が不要と判断されやすいのは、長い年月をかけて締まった地層の上にある土地です。
ただし「不要になりやすい」であって「必ず不要」ではない点に注意してください。
台地・段丘など古い地層(洪積層)の上にある土地
台地や段丘、丘陵地の多くは、約1万年以上前に形成された「洪積層(更新世の地層)」でできています。
長い時間をかけて土の粒子が締まっているため、建物の重さを支える力が大きい傾向にあります。
地理院地図で標高や地形分類を見ると、その土地が台地の上にあるのか、低地にあるのかを確認できます。
台地の上でも、台地を刻む小さな谷(谷底低地)には柔らかい土が溜まっていることがあるため、周囲より一段低い場所かどうかも見ておきましょう。
昔から宅地として使われてきた土地
長年宅地として使われ、周辺の建物に傾きや沈下が見られない土地は、地盤が比較的安定していると考えられます。
造成から長い期間が経った土地も、盛土が自重で締まり、沈下が落ち着いている場合があります。
ただし、以前の建物を解体した跡地では、古い基礎や浄化槽などの埋設物が残っていることもあるため、調査時の確認が必要です。
「高台」「神社の近く」なら安心とは限らない理由
昔から神社や寺院が建つ場所は、水害を避けて高台が選ばれたことが多く、地盤が安定している傾向があるといわれます。
ただし、これは経験則にすぎず、近くに寺社があるからといって地盤改良が不要になる根拠にはなりません。
高台であっても、切土・盛土で造成された宅地では、盛土部分が軟弱なケースがあります。
最終的な判断は、敷地ごとの地盤調査で行うことを前提にしておきましょう。
土地購入前にできる地盤チェック5ステップ

地盤調査は、原則として土地を購入したあと、建物の配置が決まってから行います。
そのため購入前の段階では、公的な地図や資料を使って「地盤改良が必要になりやすい土地かどうか」を見極めることが大切です。
次の5つのステップで確認すると、効率よくリスクを把握できます。
- ステップ1:重ねるハザードマップで液状化と盛土を確認する
- ステップ2:地理院地図で地形の成り立ちと昔の姿を見る
- ステップ3:登記事項証明書で地目の変遷を確認する
- ステップ4:現地で周辺の様子を観察する
- ステップ5:売主・不動産会社に地盤情報を確認する
ステップ1:重ねるハザードマップで液状化と盛土を確認する
国土交通省が運営する「重ねるハザードマップ」では、住所を入力するだけで土地の災害リスクを地図上で確認できます。
地盤の観点で特に見ておきたいのは、次の3つの情報です。
- 液状化の発生傾向・液状化危険度:地震時に液状化しやすいエリアの目安がわかる
- 大規模盛土造成地:谷や斜面を盛土して造成した宅地の位置がわかる
- 洪水浸水想定区域:低地や水が集まりやすい地形の目安になる
ハザードマップの種類や色分けの読み方は、別の記事で詳しく解説しています。
| 関連記事 ハザードマップの見方|土地探しで確認すべき災害リスクと対策【2026年版】 |
災害リスクの全体像をつかんだら、次は土地の成り立ちそのものを地図で確認していきましょう。
ステップ2:地理院地図で地形の成り立ちと昔の姿を見る
国土地理院の地理院地図では、標高や地形分類(台地・低地・旧河道など)を重ねて表示できます。
関東や近畿の一部では、明治期の地形図をもとにした「明治期の低湿地」データも表示でき、昔の沼や湿地の位置がわかります。
さらに国土地理院の「地図・空中写真閲覧サービス」では、過去の空中写真を年代ごとに閲覧でき、田んぼや池だった頃の様子を確認できます。
ステップ3:登記事項証明書で地目の変遷を確認する
法務局で取得できる登記事項証明書(登記簿謄本)には、土地の用途を示す「地目」が記載されています。
現在の地目が「宅地」でも、過去に「田」や「池沼」から変更された記録が残っている場合があります。
地目の変更履歴は、登記事項証明書の記載のほか、必要に応じて閉鎖登記簿を確認することでたどれます。
| 過去の地目 | 地盤リスクの目安 | 理由 |
| 田・畑 | 高い | 水分を多く含む柔らかい土が残っている可能性がある |
| 池沼 | 非常に高い | 埋め立てた土地の可能性があり、沈下しやすい |
| 宅地 | 比較的低い | 長く建物を支えてきた実績がある(ただし調査は必要) |
ステップ4:現地で周辺の様子を観察する
地図だけでなく、実際に現地を歩いて周辺の状況を確かめることも有効です。
- 道路や駐車場のアスファルトに波打ちや沈み込みがないか
- 近隣の家の基礎や擁壁、ブロック塀にひび割れや傾きがないか
- 電柱や塀が一方向に傾いていないか
- 雨の翌日に水たまりが長く残っていないか
- 周囲の土地より一段低い場所になっていないか
ステップ5:売主・不動産会社に地盤情報を確認する
売主や不動産会社が、近隣で過去に行われた地盤調査のデータや、分譲地の造成時の資料を持っている場合があります。
気になる土地であれば、売買契約の前に地盤調査を行えないか、売主に相談してみるのも一つの方法です。
契約前の調査が難しい場合は、改良費がかかる前提で資金計画に予備費を組み込んでおくと安心です。
地盤調査報告書の見方|チェックすべき3つのポイント

地盤調査の報告書には専門用語が多く並びますが、見るべきポイントを絞れば、改良が必要と判断された理由を理解できます。
戸建て住宅で主流のSWS試験とは
戸建て住宅の地盤調査で最も一般的なのが、SWS試験です。
以前は「スウェーデン式サウンディング試験」と呼ばれていましたが、2020年のJIS改正で「スクリューウエイト貫入試験」に名称が変わりました。
先端がスクリュー状のロッドにおもりを段階的に載せ、回転させながら地中に貫入させて、土の硬さを調べます。
調査は建物の四隅と中央など複数の地点で行うのが一般的で、敷地内の地盤の強さのばらつきも確認できます。
より詳しく調べる必要がある場合は、ボーリング調査が行われることもあります。
報告書でチェックしたい3つの項目
報告書を受け取ったら、次の3つの項目を確認しましょう。
| チェック項目 | 見るポイント |
| ① 自沈層の有無と深さ | おもりだけで沈んだ層が、基礎の底から何mの位置に、どの荷重で現れているか |
| ② 換算N値・許容応力度 | 深さごとの地盤の硬さと、基礎の底から2m以内の平均的な強さ |
| ③ 考察・判定結果 | 改良が必要と判断した根拠と、推奨される工法・改良する深さが書かれているか |
敷地の一部の地点だけで自沈層が見つかった場合も、不同沈下の原因になるため注意が必要です。
判定の根拠がわからないときは遠慮なく質問を
報告書の数値や判定の根拠がわからない場合は、調査会社や住宅会社の担当者に説明を求めましょう。
「どの地点の、どの深さの層が基準を満たしていないのか」を具体的に聞くと、改良の必要性に納得しやすくなります。
判定に疑問が残る場合は、第三者の専門家に報告書を確認してもらうセカンドオピニオンも選択肢の一つです。
地盤改良工事の工法と費用相場

地盤改良工事には主に3つの工法があり、軟弱層の深さによって適した工法と費用が変わります。
主な3つの工法と費用の目安
| 工法 | 軟弱層の深さの目安 | 工事の内容 | 費用の目安(延床30坪程度) |
| 表層改良工法 | 地表から2m程度まで | 軟弱な土にセメント系固化材を混ぜて固める | 30万〜80万円程度 |
| 柱状改良工法 | 2〜8m程度 | セメントミルクと土を混ぜた柱を地中に複数本つくる | 80万〜150万円程度 |
| 鋼管杭工法 | 8m以上、または重い建物 | 鋼製の杭を固い支持層まで打ち込む | 150万〜250万円程度 |
上記はあくまで一般的な目安で、実際の金額は地盤の状態や敷地条件によって変わります。
表層改良工法は浅い層の改良に適しており、工期が短く費用も抑えやすい工法です。
柱状改良工法は、戸建て住宅で広く採用されている工法です。
鋼管杭工法は深い軟弱層にも対応できる一方、費用は高額になりやすい傾向があります。
なお、セメント系の改良体は地中に残るため、将来土地を売却する際に地中埋設物として扱われることがある点も知っておきましょう。
費用が変わる主な要因と予算の組み方
地盤改良の費用は、主に次の要因で変動します。
- 軟弱層の深さ(深いほど改良範囲が広がる)
- 建物の大きさと重さ(3階建てなど重い建物ほど対策が大きくなる)
- 敷地の条件(重機が入りにくい狭小地や旗竿地では施工費が上がりやすい)
- 掘削で出る残土の処分量
地盤改良費は、土地を購入して地盤調査をするまで金額が確定しません。
そのため資金計画の段階で、建物本体とは別枠で地盤改良費の予備費を確保しておくことが、予算オーバーを防ぐコツです。
見積もりを受け取ったら、工法の選定理由と改良する深さ・範囲が調査結果と合っているかを確認しましょう。
地盤改良費を含めた付帯工事費や諸費用の全体像は、次の記事で詳しくまとめています。
| 関連記事 土地ありで新築はいくらかかる?費用相場・内訳・節約のコツを徹底解説 |
総額のイメージがつかめたら、最後にこの記事のポイントを振り返っておきましょう。
まとめ|地盤改良工事が必要かは土地選びの段階から見極めよう

地盤改良工事が必要かどうかは、最終的には建築前の地盤調査の結果で決まります。
元田んぼや沼地、川や海に近い低地、埋立地、谷を埋めた造成地は、改良が必要になりやすい土地です。
一方で、台地や段丘など古い地層の上にある土地は、比較的地盤が安定している傾向があります。
土地購入前には、重ねるハザードマップ・地理院地図・登記事項証明書・現地確認の4つで下調べをしておきましょう。
とはいえ、候補の土地ごとに地図や資料を読み解き、改良費まで見込んで判断するのは簡単ではありません。
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「この土地は地盤改良が必要になりそう?」「改良費も含めて予算内に収まる?」といった土地選びの段階の疑問も、お気軽にご相談ください。
土地と建物をセットで考えることで、購入後の想定外の出費に慌てない家づくりを進められます。
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