騒音は快適な住まいを脅かす大きな原因の一つです。特に一日の大半を過ごす家の中が騒がしいと、ストレスを感じたり、集中力が低下したりしてしまいます。
しかし、騒音問題は、家づくりの段階やちょっとした工夫で大きく改善できます。この問題の解決には、騒音の原因を正しく理解し、それに合った適切な対策を講じることが大切なのです。
この記事では、まず家の中で音が響く主な原因を解説します。その上で、新築・リフォーム時など家づくりの段階でできる根本的な騒音対策から、賃貸でもすぐにできる手軽な工夫までを詳しくご紹介します。
Contents
家の中で騒音に悩まされる原因は何?
騒音対策を始める前に、まず「家の中で発生する音」が、どのようなメカニズムで騒音となってしまうのかを理解しましょう。一口に騒音といっても、外から入ってくる音と家の中で発生する音の2種類があり、それぞれ原因と対策が異なります。
外からの騒音|家の防音性能が低い
幹線道路や近隣の話し声など、外からの騒音は、家の防音性能の低さが主な原因です。音は建物のわずかな隙間や、壁・窓などの建材を通り抜けて侵入します。
特に、窓は壁に比べて薄いため音が入りやすく、古いサッシや単板ガラスでは顕著です。また、換気口からも音が侵入しますし、壁や屋根の遮音性が低いと振動で音が伝わります。
外部の騒音対策には、家全体の遮音性を高めることが重要です。
室内の生活音|家の防音性能が高い
高気密・高断熱住宅は、隙間が少ないため外部の音は遮断できても、その反面、室内の音が反響しやすいという側面があります。
硬い壁や床が多い空間では、家族の移動の際の足音やドアの開閉音といった衝撃音が構造体を伝わり、下の階や隣室に響きやすいのです。
また、話し声やテレビの音も壁などで何度も反射し、残響となって不快に感じられます。さらに、トイレの流水音や洗濯機の振動音などの水回りの音が、配管や壁を通じて伝わるケースもあります。
このタイプの騒音対策には、音を防ぐ「遮音」だけでなく、音を吸収する「吸音」を取り入れ、反響を抑えることが重要になります。
家づくりの段階でできる騒音対策とは?
騒音対策を最も効果的に行えるのは、新築時やリフォーム時など、家づくりの設計段階です。建物全体の構造や間取り、使用する建材を選べるため、根本から静かな住まいを実現できます。
騒音が少ない土地を買う
騒音対策の第一歩は、音源から遠ざかることです。これから土地を探す場合、立地環境が騒音に大きく影響することを認識しておきましょう。
幹線道路、鉄道沿い、空港周辺、工場地帯、商業施設、学校や公園の近くなどは、音が発生しやすいため、避けるか十分な距離を確保することが望ましいです。
また、周囲に大きな建物や壁があると、音が反響してかえって騒音となることがあります。
反対に、周囲に緑が多いと、樹木が吸音材の役割を果たしてくれる場合もあります。可能であれば時間帯を変えて現地に足を運び、実際に騒音レベルを確認しましょう。
防音性能の高い窓にする
家の中で最も音が侵入しやすい場所は窓です。外からの騒音を遮断するためには、窓の防音性能を最大限に高めることが極めて重要となります。
最も効果的なのは、既存の窓の内側にもう一つ窓を設ける二重窓の設置です。窓と窓の間にできた空気の層が音の振動を大幅に減少させてくれます。
また、窓ガラス自体も、2枚のガラスの間に防音特殊フィルムを挟んだ防音合わせガラスを選ぶと、特に遮音性能が向上します。
さらに、サッシの気密性も重要であり、隙間が多いとそこから音が漏れるため、気密性の高いサッシを選びましょう。
高気密・高断熱住宅にする
高気密・高断熱住宅は、快適な室温を保つために建物の隙間を極力なくし、断熱材をしっかり施工しています。
この「隙間がない」という特徴が、そのまま外部からの音の侵入を防ぐことにつながり、高い遮音性を発揮します。ただし、気密性が高すぎるために室内の音が響きやすいという側面も持ちます。
そのため、高気密・高断熱住宅で快適さを追求するには、単に音の侵入を防ぐ「遮音」だけでは意味がありません。
次に紹介するような「吸音」の要素をバランス良く組み合わせる設計が求められます。
防音性能の高い建材・建具を使う
壁や床、ドアなどの建材や建具の性能は、音の伝わり方に大きく影響します。
遮音性を高めるには、壁の内部に高密度の遮音シートや吸音性の高い断熱材を組み込んだり、壁の厚みを増したりする方法があります。
また、二階建て以上の住宅で問題になりやすい床の衝撃音対策には、クッション性や重量があり音を吸収・遮断する性能を持つ防音フローリングや、その下に敷く防音マットが有効です。
さらに、音の出入りが特に気になる場所には、気密性の高いパッキンが施された防音ドアを採用することで、音漏れを大幅に防ぐことができます。
これらの建材はコストがかかる場合もあるため、予算と相談しながら導入を検討しましょう。
間取りを工夫する
建物の構造だけでなく、間取りを工夫することでも、騒音問題は大きく改善されます。これはコストを抑えながら高い効果を得られる重要な対策の一つです。
例えば、水回りやホームシアター、子どものプレイルームなど騒音源となる部屋と、寝室や書斎など静かに過ごしたい部屋の間に、収納スペースや廊下、クローゼットといった音を遮るスペースを配置します。
また、トイレやお風呂などの水回りの音は配管を通して伝わりやすいため、寝室の隣に配置するのは避けるべきです。同様に、上階で足音が発生しやすいリビングの直下に、寝室を設ける配置も避けた方が無難です。
吸音性の高い素材を選ぶ
高気密住宅などで問題になる室内の音の反響を防ぐためには、吸音性の高い素材を積極的に取り入れることが効果的です。音を吸収し、不快な響きを抑えてくれます。
天井や壁の一部に吸音ボードや吸音クロスを施工するほか、石膏ボードなどの硬い建材と違い、木材や漆喰・珪藻土などの塗り壁は、多孔質であるため多少の吸音効果が期待できます。自然な風合いを楽しみながら、音の反響を和らげる効果を得られるでしょう。
さらに積極的に音をコントロールしたい場合は、厚手のカーテンやタペストリーなどの活用も有効な手段です。これらを活用して、デザイン性と快適性を両立させましょう。
今すぐできる騒音対策はあるの?
「もう家を建ててしまったから無理…」と諦める必要はありません。
新築や大規模リフォームを行わなくても、今の住まいで手軽に始められる騒音対策はたくさんあります。
これらの対策は、特に賃貸住宅にお住まいの方や、予算を抑えたい方におすすめです。ちょっとした工夫で、騒音レベルは大きく改善され、静かな暮らしを手に入れることができるでしょう。
防音・遮音カーテンを付ける
窓は音の出入り口であり、手軽に効果を得られる対策がカーテンの交換です。通常のカーテンではなく、防音性能に特化したカーテンを選ぶことで、外部からの騒音を大幅に軽減できます。
防音カーテンは、生地の裏側に樹脂コーティングを施したり、高密度の繊維を何層にも重ねたりして、音の振動を吸収・遮断する仕組みです。選ぶ際のポイントは、窓全体をしっかりと覆い、カーテンと壁の隙間を極力なくすことでしょう。
サイズは窓枠よりも大きく、床まで届く長さにすると、遮音効果を最大限に高めることができます。既存の窓と防音カーテンの間に空気の層ができることで、遮音性がより向上します。
カーペットやラグを敷く
室内の生活音、特に足音や椅子の移動音などの床から伝わる衝撃音は、カーペットやラグを敷くことで手軽に軽減できます。
硬い床に音が直接伝わるのを防ぎ、音の振動を繊維が吸収してくれるため、階下への音の伝わりを抑えられます。
特に効果が高いのは、厚手のものや毛足の長いもの、そして裏面に防音加工が施されている製品です。フローリングや畳の上に敷くだけで、衝撃音の伝達を抑えられるだけでなく、室内の音の反響を和らげる吸音効果も発揮します。
子どもやペットがいるご家庭では、移動が多いリビングや子どもの部屋など、気になる場所に敷くと効果を実感しやすいでしょう。
家具のレイアウトを変える
お金をかけずに今すぐ始められるのが、家具のレイアウト変更による騒音対策です。家具は、その大きさや素材によって音を遮ったり、吸収したりする役割を果たします。
例えば、本棚や背の高い収納棚を壁際に配置し、音の発生源を覆うように置くことで、音を吸収したり遮断したりする簡易的な防音壁の代わりになります。
特に本が詰まった本棚は、本自体が優れた吸音材となるため、高い効果が期待できるのです。
また、寝室のベッドやソファといった布製の家具を隣室との壁に寄せるだけでも、布が音を吸収する役割を果たし、音漏れや音の侵入を軽減できます。レイアウトを変えるだけで、音の聞こえ方が大きく変わるのでぜひ試してみてください。
まとめ
騒音対策で快適な家づくりを目指すには、まず騒音の原因を正しく特定することが重要です。外からの騒音に悩む場合は窓や壁の「遮音」を、室内の反響音に悩む場合は吸音性の高い素材を取り入れる「吸音」を意識した対策が必要です。
家づくりの段階であれば、土地選びから防音建材の選択、間取りの工夫といった根本的な対策を講じることで、将来にわたって高い防音効果を得られます。
もし新築やリフォームが難しくても、防音・遮音カーテンの設置、ラグの使用、家具のレイアウト変更など、今すぐできる手軽な工夫で騒音レベルは大きく改善されます。
騒音を減らすことは、単に静かになるだけでなく、心身のストレスを軽減し、質の高い生活を送ることにつながります。この記事を参考に、ご自身の住まいに合った最適な方法を見つけて、快適な住環境を実現してください。