住宅ローンの返済に追われ、毎月の生活がギリギリ…そんな状況に陥っている家庭が増えています。マイホームの夢を叶えたはずが、予想以上の負担に苦しむ現実があります。これは決して他人事ではありません。
この記事では、住宅ローンによるギリギリ生活の原因と対策、そして万が一滞納が続いた場合の影響まで徹底解説します。返済に悩む方も、これから住宅購入を考える方も、ぜひ参考にしてください。
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住宅ローンによるギリギリの生活の実態
住宅ローンは、文字通り住宅購入のために組む長期ローンのことです。国土交通省の調査によると、注文住宅を建てる際の平均購入資金は5,811万円で、新築時に住宅ローンを利用する割合は79.5%となっています。返済期間の平均が32.7年(土地は34.4年)となっています。
出典:国土交通省「令和5年度 住宅市場動向調査報告書」
次に、返済負担率について見てみましょう。返済負担率とは、住宅ローンなどの年間返済率が年収に占める割合のことです。注文住宅購入者の年間負担率は、19.4%です。
出典:国土交通省「令和5年度 住宅市場動向調査報告書」
年収500万円の方が3,000万円で住宅ローンを組むと、毎月約8万3,000円(年間で100万円)の返済が必要になります。給料から税金や社会保険料が引かれると、実際に使えるお金は年間で400万円くらい、月に直すと33万円程度になります。ここから住宅ローンの8万3,000円を払うと、残りは約25万円です。
この中から食費や光熱費、通信費、子どもの教育費など、生活に必要なすべての支出をまかなわなければなりません。家族の人数や住んでいる地域によっても変わりますが、毎月8万3,000円の住宅ローン返済は家計にとってかなりの負担となり、自由に使えるお金が大きく制限されてしまいます。
住宅ローンで生活がギリギリになる主な原因
住宅ローンで生活が苦しくなる理由として、以下の3点が考えられます。
- 収入に見合わない物件の購入
- 無理な返済計画
- 予期せぬ収入の減少
それぞれの内容について、詳しく解説していきます。
収入に見合わない物件の購入
今の収入より高すぎる物件を買ってしまうと、後々の返済が苦しくなりがちです。一般的に、無理なく返せる住宅ローンの金額は年収の5~6倍までと言われています。これを超えると家計が厳しくなる可能性が高まります。
例えば、年収500万円の方が4,000万円(年収の8倍)のローンを組むと、毎月約13万3千円の返済が必要になります。手取りが月33万円程度だとすると、住宅ローンを払った後は約20万円しか残りません。この中から食費や光熱費、教育費など全ての生活費をまかなわなければなりません。
素敵な物件に惹かれるのは自然なことですが、見た目や立地だけで決めず、毎月の返済額をしっかり計算することが大切です。現在の収入を大きく超える物件を購入してしまうと、将来の生活を圧迫してしまいます。
無理な返済計画
住宅ローンで生活がひっ迫する大きな原因の一つが、現実的でない返済プランです。頭金をまったく用意せずに借入れを行うと、当然ながら総額が膨らみ、毎月の負担も重くなります。例えば3,000万円の住まいを購入する際、頭金500万円を用意できれば、借入総額が減るだけでなく、金融機関からの信頼も高まり、条件が有利になることもあります。
また、「将来は給料が上がるから大丈夫」という楽観的な見通しで計画を立てるのも危険です。実際には予想通りに収入が増えないケースも多く、ボーナスを当てにした返済設計も会社の業績悪化で崩れる可能性があります。
さらに、子どもの教育費増加や親の介護など、人生には予期せぬ出費が付きものです。病気やけがで働けなくなるリスクも考慮すべきでしょう。
予期せぬ収入の減少
住宅ローン返済中に突然の収入減に見舞われると、それまで順調だった家計のバランスが一気に崩れることがあります。会社の業績悪化によるボーナスカットや、思いがけない部署異動での給与ダウン、あるいは契約形態の変更など、働き方の変化で手取り額が減少するケースは少なくありません。
また、健康上の問題で休職を余儀なくされたり、家族の介護のために仕事を調整せざるを得なくなったりすることも、収入減少の要因となります。特に共働き世帯で片方が働けなくなると、家計への打撃は大きくなりがちです。
さらに、夫婦関係の変化による別居や離婚は、住居費だけでなく生活全般の支出増加につながり、ローン返済を一層困難にします。
住宅ローンの滞納が続くとどうなる?
さまざまな事情で住宅ローンを滞納してしまう可能性はあります。では、滞納したらどのようなことが起こるのでしょうか。ここでは、住宅ローンの滞納が続くと起きる3つの事柄について解説します。
督促状などが届く
住宅ローンの支払いが遅れると、まず金融機関から「支払いが確認できていません」という連絡が来ます。これは滞納から1~2ヶ月程度で届くことが多く、電話や書面での通知(督促状)があります。この段階での対応が非常に重要です。すぐに金融機関に連絡を取り、状況を説明しましょう。
連絡を無視したり対応が遅れたりすると、さらに厳しい内容の「催告書」が送られてきます。これは通常、滞納から2~3ヶ月後に届く最終警告のようなものです。「このまま支払いがない場合は法的手続きに移行します」といった文面が記載されています。
催告書の段階でも対応しないと、次は残りの借入金を一括で返済するよう求められ、最終的には自宅が競売にかけられる恐れもあります。早い段階での適切な対応が必要です。
信用情報にキズがつく
住宅ローンの支払いが遅れると、その記録が信用情報機関というデータベースに「事故情報」として残ってしまいます。一般的に2ヶ月以上の遅延や、3回目の支払日を過ぎる延滞があると、この情報が登録される可能性が高まります。
事故情報は約5年間保存され、その間はさまざまな金融サービスの利用が難しくなります。新しいクレジットカードを作ろうとしても審査に通らなかったり、車のローンを組もうとしても断られたりすることがあります。
加えて、携帯電話の分割払いができなくなったり、引っ越しの際に賃貸契約の保証会社の審査に影響したりと、日常生活の様々な場面で支障をきたす恐れがあります。住宅ローン以外の借入れにも影響するため、一度信用情報に傷がつくと、その回復には長い時間がかかるのです。
連帯保証人に影響が出る
住宅ローンの支払いが滞ると、連帯保証人の方にも深刻な問題が波及します。ローンの契約者が返済できなくなった場合、金融機関は連帯保証人に対して同じように返済を求めることができるのです。実際には、最初は電話での連絡から始まり、やがて正式な督促状が保証人の自宅にも届くようになります。
特に注意すべきは、連帯保証人は「まずは契約者本人に請求してください」と主張する権利がないという点です。契約者と同等の責任を負うため、すぐに支払いを求められます。状況が悪化すれば、保証人の給料や預金口座、場合によっては所有する不動産までが差し押さえられることもあります。
さらに、住宅が売却されてもローンが完済できない場合、残った借金についても保証人が返済する義務を負います。このように、保証人になることは、大きな責任を伴うものです。人間関係にも深刻な亀裂が生じる可能性があることを認識しておく必要があります。
住宅ローン返済が苦しいときの具体策
もし、住宅ローンの返済が苦しくなったとき、どのように行動すればよいのでしょうか。ここでは、返済が苦しいときの具体策を紹介します。
金融機関に早めに相談する
住宅ローンの支払いが厳しくなったと感じたら、まず融資を受けた銀行や金融機関に相談することが最善策です。多くの方が恥ずかしさや不安から相談を先延ばしにしますが、早い段階での連絡ほど解決の選択肢が広がります。
金融機関側も、返済継続を望んでいるため、状況に応じた対応策を提案してくれることがあります。例えば、返済期間を延ばして月々の負担を軽くする方法や、一定期間は利息だけを支払う「元本据置」という制度を利用できる場合もあります。
相談の際は、収入の状況や家計の見通しなど、現状を正確に伝えることが大切です。滞納してからでは対応が厳しくなることがありますので、「返済が難しいかも」と感じた時点で勇気を出して連絡することをおすすめします。
住宅ローンの借り換えを検討する
住宅ローンの返済が厳しいと感じたら、借り換えという選択肢を検討してみましょう。これは現在のローンを新しい条件のローンに切り替える方法で、毎月の支払額を減らせる可能性があります。
特に、契約から数年経過している場合や、市場の金利が下がっている時期は、より好条件での借り入れができるチャンスです。例えば、金利が1%下がるだけでも、長期間では大きな差になります。また、返済期間を延ばすことで月々の支払いを減らすこともできます。
借り換えを検討する際は、複数の銀行やネット銀行の条件を比較することが大切です。手数料や保証料なども含めた総コストで判断しましょう。ただし、新たな審査があるため、収入や勤務状況に変化がある場合は注意が必要です。
家計を見直す
住宅ローンの支払いが厳しくなったら、家計全体を見直すことが有効な対策です。特に毎月決まって発生する「固定費」の見直しは、継続的な効果が期待できます。
スマホやインターネットの契約プランを見直すだけでも、家族全体で月に数千円の節約になるケースが多いです。また、加入している保険の内容や金額を再検討したり、あまり使っていない動画配信や音楽サービスなどの月額サービスを一時停止したりすることも検討しましょう。
電気・ガス・水道といった光熱費も、プランの変更や使用方法の工夫で削減できます。車の維持費も大きな負担になるため、使用頻度が低ければ売却やカーシェアリングへの切り替えも選択肢の一つです。
物件を売却する
住宅ローンの返済が長期的に困難な状況では、思い切って住まいを売却することも検討する価値があります。住宅を所有し続けることで生じる精神的・経済的な負担よりも、売却して新たなスタートを切る方が良い場合もあるでしょう。
マイホームを手放すのは心情的に辛い決断ですが、売却により得たお金でローンを完済できれば、返済の重圧から解放されます。ローン残高より高く売れれば、次の住居の頭金にもできます。
もし借入残高が売却価格を上回る場合でも、金融機関と相談して「任意売却」という方法があります。これは通常の競売より高値で売れることが多く、残った借金も分割での返済交渉が可能です。
住宅ローンでギリギリの生活にならないための予防策
「住宅ローンの返済だけで精一杯」そんな生活にならないためには、どうすればよいのでしょうか。ここでは、ギリギリの生活にならないための3つの予防策を解説します。
適正な借入額を見極める
住宅ローンでギリギリの生活にならないためには、「適正な借入額を見極める」ことが非常に重要です。適正な借入額とは、将来の収入や支出の変化も見越し、無理なく返済できる範囲で設定する金額を指します。
一般的に、年間の住宅ローン返済額は年収の20%以内に抑えるのが理想的とされています。
【年収別の年間返済額の目安】
年収 | 年間返済額の目安(20%) | 月々の返済額 |
400万円 | 80万円 | 約6万7,000円 |
500万円 | 100万円 | 約8万3,000円 |
600万円 | 120万円 | 約10万円 |
また、総借入額の目安としては「年収の5倍以内」という基準もあります。例えば年収500万円なら、借入総額は2,500万円程度が無理のない範囲と言えるでしょう。将来の収入減や教育費増加などのリスクも考慮し、余裕を持った計画を立てることが、長期間続く住宅ローン生活を安心して送るコツです。
将来の収入変動を見据えた計画を立てる
住宅ローンでギリギリの生活を避けるためには、将来起こりうる収入や支出の変動を予測した計画が欠かせません。35年という長い返済期間の間には、様々な人生の変化が訪れるものです。
まず、以下のライフイベントを時系列で整理してみましょう。
- 子どもの教育費(小学校から大学まで)
- マイカー購入や買い替え
- 住宅のメンテナンス費用
- 親の介護費用
- 自分たちの老後資金
これらの支出に備えつつ、収入面では転職や育児休業などによる一時的な減少も想定する必要があります。また、突発的な出費や収入減に備えて、少なくとも半年分の生活費を緊急資金として確保しておくことをおすすめします。将来の不確実性に対応できる余裕を持った返済計画が、長期にわたる住宅ローン生活の安定につながります。
固定金利と変動金利のどちらが良いか判断する[U2]
住宅ローンを組む際、金利タイプの選択は将来の家計に大きく影響します。それぞれの特徴を理解して、賢い選択をしましょう。
金利タイプ | 金利変動 | 返済額 | 初期金利 |
固定金利 | 変動なし | 返済期間を通じて同じ | 比較的高め |
変動金利 | 一定期間で見直し | 金利変動に応じて変化 | 比較的低め |
固定金利が向いているのは、以下の人です。
- 家計の安定性を重視したい
- 金利上昇リスクを避けたい
金利が変動金利よりも高くなりますが、返済額が固定されるため、返済の予測がしやすいというメリットがあります。
変動金利が向いているのは、以下の人です。
- 当初の返済負担を抑えたい
- しばらく金利が上昇しないと予測している
- 金利変動に対応できる貯蓄がある
当座の返済金額を抑え、かつ、金利が低い状態が継続すると予想される場合は、変動金利のメリットが大きいといえます。
自分の状況に合わせ、どちらにするべきか選択したほうが良いでしょう。
まとめ
今回は、住宅ローンでギリギリの生活になる理由や滞納すると起きること、打開するための具体策や予防策を解説しました。無理な返済計画や収入に合わない家の購入、急な収入減などによって家計が圧迫されることがあります。もし支払いが遅れると、金融機関からの催促や信用情報への記録、保証人への請求など、生活に大きな影響が出てしまいます。
負担が大きいと感じた時は、早めに取引先の金融機関に相談したり、ローンの条件を見直したりするのが有効です。また、費用の見直しや住まいの売却も選択肢となります。
大切なのは、最初の計画時から無理のない借入額や返済期間を考え、不測の事態にも備えられる家計管理を心がけることです。安心して暮らせるマイホームを実現するためにも、しっかりと準備をしてローンと向き合いましょう。
住宅ローンについても、心配事はぜひ一度ご相談ください。