憧れのマイホーム購入にワクワクしながら土地探しを始める方もいるでしょう。
日当たりの良さは住宅の快適性に直結しますが、土地や近隣の環境によっては思うようには行かないケースがあります。
自分のイメージするマイホームを建てるためには、知っておくべき住宅に関する法律があり、その1つが日影規制です。
本記事では、土地購入前に知っておくべき日影規制、その注意点や気をつけたい北側斜線制限についてご紹介します。
Contents
土地を購入する前に調べておきたい日影規制とは?
土地を購入する前に調べておきたいのが日影規制です。
これは建築基準法で決められた規制で、守られていない場合には住宅を建築できません。
どのような法律なのか、2つのポイントから紹介していきましょう。
日影規制とは?
冬至の日(12月22日頃)を基準とし、建物内に全く日が当たらないことのないように高さを制限したのが日影規制です。
年間通じて、窓越しに感じる太陽の光は気持ちを明るくし元気にします。
しかしながら冬は日照が少なく、南向きの部屋は光が差し込みにくくなります。
このことからも、冬至を中心にした日影規制が決められました。
冬でも敷地が広く南側に光を取り込めるようにすることは可能ですが、誰もができるわけではありません。
このようなケースでは、窓の背を高くして部屋全体を明るくすることが可能です。
そのためには住宅に十分な高さがなくてはならず、隣接する住宅すべてが同じように高くしてしまうと日当たりに問題が生じます。
このようなトラブルを招かないために、「用途地域」と「高さ」に規制が設けられています。
例えば、2階建の住宅が並ぶ地域に大きなビルが建ってしまうと、太陽光が遮られ住宅内はじめじめした不快な環境になってしまいます。
それだけでなく、見晴らしも悪くなり生活環境として好ましいとは言えません。
生活するにあたり、どの家にも均等に太陽の光が差し込み、快適に生活ができるようにするための規制と言えます。
参考:内閣府「日影規制の概要」
用途地域の種類
都市計画法に基づいて、建物の規模や用途を13種類に区分けしたのが用途地域です。
規制内容も種類によって異なり指定がない区域も存在します。
建物同士の相性を考えた上で快適に生活が区分されており、日照の確保だけでなく景観の観点からも区分されています。
計画的な都市形成のために、建築される建物の大きさや高さ・用途の目的に応じて決められているのです。
用途地域 | 建物規模 | 規制内容 |
---|---|---|
第一種低層住居専用地域 | 2階建て住宅・共同住宅・寄宿舎・下宿 | 高さ10mまたは12mまで |
第二種低層住居専用地域 | 低層住宅保護地域 コンビニ・カフェ・理髪店など | 床面積150平方メートル以下 |
第一種中高層住居専用地域 | 中高層住宅保護地域 高さ制限の適用はなし 隣地斜線規制が適用 | 床面積が500平方メートル以下 マンションや病院など |
第二種中高層住居専用地域 | 中高層住宅保護地域 高さ制限の適用はなし 隣地斜線規制が適用 | 床面積1500メートル以下 マンションや2階建て事務所など |
第一種住居地域 | 住居の環境保護地域 高さ制限及び北側斜線規制なし | 床面積3000平方メートルまでの店舗等が建築可能 |
第二種住居地域 | 住居の環境保護地域 | 床面積10000平方メートルまで(店舗など)、床面積3000平方メートルまで(事務所) |
準住居地域 | 国道や幹線道路の沿道周辺 | 映画館や劇場の建設ができる |
田園住居地域 | 田園と市街地の共存地域 | 農家を営む方向け住宅地 |
近隣商業地域 | 建物の種類に制限なし 道路斜線規制や隣地規制は緩やか | 工場や飲食店、大衆浴場など |
商業地域 | 商業地域で建築可能な建物 | 商業に特化した地域 |
準工業地域 | 工場に隣接した地域 | 工場労働者の住居や寮 |
工業地域 | 工場・倉庫等の建設に制限なし | 工業に特化した地域 |
工業専用地域 | 工場以外の用途の立地には制限がある | 住宅の建築はできない |
日影規制の注意点
健やかな生活できるように住環境を守るために考えられえているのが、日影規制です。
用途地域だけでなく、敷地条件によっては複雑になるため独自の基準が設けられています。
ここでは日影規制の注意点について解説します。
住宅を3階建てにする場合
通常の2階建て住宅であれば、軒高は7m以下に収まるため問題はありませんが、開放的な空間作りのために「吹き抜け天井」を検討する方は注意が必要です。
吹き抜け天井は3階建てとして制限が入るため、指定されている地域以外を選ばなければなりません。
自分が考える周辺の住環境と室内の間取りがマッチしなくなるケースもあります。
日影規制以外の制限もありますので慎重に検討してください。
間取りを優先するのか、日当たりを優先し考えるかによって選べる土地に違いがあります。
住宅の高さが周囲に対して干渉しあわないと判断された場合は、特例で緩和対象になることもあるようです。
地面は対象外
日影規制はあくまで建物を対象としていて、玄関前や庭などの地面は対象外となります。
建物の中に太陽が差し込むかどうか、その時間はどれくらいかを決めるのが日影規制です。日影になる時間が短くても、庭などが明るくなるとは限りません。
ガーデニングのために庭を広くしたい、玄関先を花で飾りたいなどと計画している方は注意が必要です。
家の空間を広くしたいと、天井を高くすれば部屋の中は明るくなりますが、土地によっては庭が日陰になりじめじめして草花が育たなくなるケースも考えられます。
自分が建てたい家のことだけではなく、周囲の環境にも配慮した規制法があることを理解しましょう。
日影になる時間の上限
1日中、家の中に日差しが降り注ぐのが理想ですが、近隣に住宅がある土地ではそうもいきません。
生活の快適性を保つためには、日影になる上限時間を決める必要があります。
用途地域や敷地境界線範囲によって、上限は決められていますので土地探しの参考にしてください。
用途地域 | 敷地境界線5〜10mの範囲 | 敷地境界線から10m超え |
---|---|---|
第一種・第二種低層住居専用地域 | 3〜5時間 | 2〜3時間 |
第一種・第二種中高層住居専用地域 | 3〜5時間 | 2〜3時間 |
第一種・第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域 | 4時間 | 2.5時間 |
準工業地域 | 5時間 | 3時間 |
2階部分が作る日陰の規制とは
「軒高7m以下、もしくは2階建ての建物」に対して日影規制はないため、一般的な2階建て住宅が規制対象になることはありません。
規制対象にはなりませんが、1日中日が当たらない場所があることで近隣住民とトラブルになる可能性も考えられます。
日影規制に反していないからではなく、日影が周辺に及ぼす影響などを考えるための現地調査が大切です。
建物や土地情報があれば個人で調べることはできますが、時間もかかりますし用途地域をまたいでいると厳しい方が採用されます。
自分が希望する住宅の間取りやデザインをある程度決めたら、不動産会社に相談し適切な場所を探しましょう。
また、土地に合わせて住宅の高さやデザインを検討しなおす必要があることも考えておきましょう。
土地を購入する際に気を付けたい北側斜線制限
太陽は南から差し込むため、隣家に採光がとれなくならないように考慮したのが北側斜線制限です。
近隣住民とのトラブルを避けるためにも、北側斜線制についての理解を深めておきましょう。
北側斜線制限とは
北側斜線制限は第一種低層住居・中高層住居専用地域、第二種低層・中高層住居専用地域、田園住居地域の5つの区域で発生します。
都市計画区域であっても、背の高い建物が次々と建築されてしまうと街全体が暗くなり、住宅にも太陽の光が当たらなくなってしまいます。
建物周辺の日当たりや風通しを確保するために、建物の高さを制限する斜線制限が決められました。
北側斜線制限はその1つであり、良好な住環境を保つため、建物の北側に日当たりや風通しを確保するための制限です。
北側は太陽が差し込みにくい場所であり、制限を守らないと近隣住民とのトラブルに発展します。
北側の高さが5mまたは10mを超える部分にかかる制限で、斜線制限の中でも制限内容が厳しくなっています。
北から南の屋根が三角形になっている住宅は北側斜線制限によってデザインされたと考えていいでしょう。
緩和が受けられる
厳しい基準の北側斜線制限ではありますが、建築予定の敷地が北側敷地の地面より1m以上高い場合、緩和措置が受けられます。
建物の北にある敷地の境界線から垂直に5mか10m上がった部分に一定の傾斜で引かれた斜線を超えないように建物を建てるのが北側斜線制限です。
境界線を離すか高さに斜面をつけ、日照に問題がなければ適用範囲を緩和させられます。
敷地の北側が道路、河川の場合にも、高低差及び境界線の起算位置を考慮し制限が緩和可能です。
北側斜線制限で緩和を受ける場合には、建物の真北を求めさまざまなチェックを受けなければなりません。
北側斜線制限がある土地を検討するならば、専門家に相談し緩和対象となるのか、どのようにすれば緩和されるのか確認してください。
似たような言葉の隣地斜線規制
隣地斜線規制は、高さ20m、または31mを超えるマンションなどの高層建築物を対象とした規制です。
一種低層住居専用地域や二種低層住居専用地域、田園住居地域内には適応されません。
隣地境界線に対して垂直方向に規制がかかるため、隣地境界線が不整形な敷地では、境界となる辺ごとに斜線の検討が必要となります。
住宅が隣地にある場合には関係がありませんが、更地でマンションや事務所など個人病院などの建築予定地の場合は注意が必要です。
計画敷地が隣地の地盤より1m以上低い場合や超える部分を隣地境界線から後退させると緩和対象となります。
公園や広場などが面している、開発予定であれば緩和されますから確認してください。
具体的な内容は自治体によって異なるため、問い合わせするか専門家に相談しましょう。
まとめ
マイホームを購入する際には、住宅ローンだけでなく建築基準法などを頭に入れて進めましょう。
快適な生活を送るためには、自分たちの意見だけを優先するのではなく、近隣住民とのコミュニケーションが上手くいくようにしなければなりません。
誰もが日当たりや風通しの良い住宅で生活をしたいはずです。
北側斜線制限以外にも複数の制限があり、それを解決しなければマイホームの建築はできません。
納得行く土地を探すのは大変ですが、購入を決めてから後悔しないように専門家に相談するのがおすすめです。ぜひ、お気軽にご相談ください!